中教審(答申)に対する声明
2024年8月28日
全群馬教職員組合
8月27日、中央教育審議会は「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」を答申しました。5月13日に公表された「審議のまとめ」の内容に対し、現場の教職員や研究者から「問題解決につながらない」と多くの批判があったにも関わらず、ほぼ原案通りの答申となりました。答申は多くの問題を含んでいますが、3点のみ指摘します。
答申は「教育の本質は、教師と子供たちとの人格的な触れ合いにある」ことを認めています。現場の教職員もそのような教育がしたいと強く願っています。そしてそれができない最大の原因は長時間労働と教員不足です。しかし答申は、その解消に最も効果的な基礎定数改善には後ろ向きであり、本当に問題を解消するつもりがあるのかすら疑われます。
2つ目の問題は、長時間労働の歯止めとしての時間外手当支給の必要性を否定していることです。教員に無定量な時間外労働を強いてきた給特法の本質的矛盾は温存したまま教職調整額の問題にすりかえていますが、これは長時間労働の抑制につながらないばかりか、「教職調整額が上がったのだからこれまで以上に働くべき」という空気が醸成される可能性もあります。これは教員の過労死を増やすことにつながりかねない命の問題です。
そして最大の問題が「新たな職」と、それに対応した級の創設です。答申は人事評価で「教師のモチベーションを高める」としていますが、上司からの評価をモチベーションにする教師に、本質的な教育ができるのでしょうか。そして教育の本質たる「教師と子供たちとの人格的な触れ合い」をどう評価し、どうやって給与という数値に変換するのでしょうか。本来評価できないものを評価させられる管理職も苦しい立場に置かれます。そして何より、評価と査定によって教員から自主性と裁量を奪うことは教員を、中央からの命令に忠実に従い、子どもたちを管理する管理者に変えていきます。これは教育の本質から外れることであり、教職の魅力を失わせ、若者の教職離れも加速させるでしょう。
かつて日本では、教育は政府に従属させられていました。決定事項が上から降りてきて、教師は子どもたちを管理し、ついには戦場に送り出しました。その反省から戦後、教育委員会制度が創設されました。委員会が地域の教育条件整備に責任をもつことで、教育が時の政府の都合に左右されないよう、歯止めとしての役割が期待されてのことです。
教育委員会と教職員組合の利害は対立することが多いですが、長時間労働と教員不足の解消、よりよい教育を目指すという点では一致できるはずです。今回の答申は「基礎定数は増やさない」「時間外手当は支給しない」「新たな職を創設する」という政府の都合を優先したものであり、問題解消につながらないことは明らかです。私たちは今回の答申を強く批判します。教育委員会には、政府の都合よりも、子どもたちと教職員の人権を優先する教育政策の実現を求めていきます。そして私たちの要求への社会的理解を広げ、保護者、労働者をはじめ多くの人々と手を携え、公教育を守っていく決意をここに表明します。