私たち教職員の権利は様々な法令によって守られています。
私たちの権利の法的根拠について知っておきましょう。
日本国憲法
まず最高法規である日本国憲法から見ていきます。
憲法は国民を縛るものではありません。国家権力が国民の人権を侵害しないよう、国民が国家権力を縛るためのものです。憲法を知らなければ、国家権力(≒政府・教委・管理職)が我々の人権を侵害しても抗議できません。
私たちの権利を守るための憲法の条文をいくつか例示します。
第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
第18条 何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
第27条 ② 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。
第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
日本国憲法
※同時に私たちは、子どもたちから見ると大きな権力であり、「ブラック校則」などで子どもたちの人権を侵害することがあります。私たち自身も憲法を見直し、子どもたちの人権を侵害しないようにしていかなければなりません。
労働基準法
労働三法といえば、「労働組合法」「労働関係調整法」「労働基準法」です。
実は、私たち公務員は「労働組合法」「労働関係調整法」の適用除外とされており、「労働基準法」も一部適用除外となっています(地方公務員法58条)。これらは戦後の逆コースの中で不当に制限されたものであり、抗議し続けていくべき課題です。しかし労働基準法は基本的に適用されるので、法律を知ることで、現状の違法状態を追及する根拠を得ることができます。
地方公務員法による労基法適用除外
2条、14条②③、24条①、32条③④⑤、38条の2②③、38条の3、38条の4、39条⑥⑦⑧、41条の2、75~93条、102条
これらの適用除外があり、公立学校は労働基準監督署の監督を受けないため、違法な長時間労働があっても臨検・指導が入ることはありません。しかし組合は当局と交渉できるため、労基法の条文を根拠として労働環境の改善を要求することができます。
第32条 使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
② 使用者は、一週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き一日について八時間を超えて、労働させてはならない。第34条 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
③ 使用者は、第一項の休憩時間を自由に利用させなければならない。第35条 使用者は、労働者に対して、毎週少くとも一回の休日を与えなければならない。
労働基準法
上記に引用した労基法の労働時間・休憩時間・休日に関しての規定は教職員にも当然に適用されるものであり、これが守られてさえいれば、異常な長時間労働など起こるはずがありません。ではなぜ、現状のような異常な事態が容認されているのでしょうか?
給特法と超勤4項目
給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)について知りましょう。
第3条 ②教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない。
給特法(公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法)
第6条 教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合は、政令で定める基準に従い条例で定める場合に限るものとする。
1960年代、多くの教員が超勤訴訟を起こして権利を主張したため、政府・与党は「超勤手当を支給しない」と明示する給特法を制定するというウルトラCで対抗しました。そして時間外勤務を命じる場合の最低限の歯止めとして「超勤4項目(限定4項目)」が決められました。
超勤4項目(限定4項目)
一 教育職員については、正規の勤務時間の割振りを適正に行い、原則として時間外勤務を命じないものとすること。
二 教育職員に対し時間外勤務を命ずる場合は、次に掲げる業務に従事する場合であって臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限るものとすること。
イ 校外実習その他生徒の実習に関する業務
公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令
ロ 修学旅行その他学校の行事に関する業務
ハ 職員会議に関する業務
ニ 非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務
これを見れば、勤務時間外の部活指導や交通指導などを命じられないことは明白です。そしておそらく校長がそれらの業務を命じることはないはずです。
良心的な校長であれば「勤務時間外で申し訳ないがお願いしたい」と話すでしょう。そうでない校長であれば、職員会議資料に名前を掲載し、「時間外にやるのが当然」という黙示の命令だけして、勤務時間のことについて触れることすらしないでしょう。(もし命じてくる校長がいたら、「法律を知らない」か「知っているけど守る気がない」ということです)
4項目以外の勤務超過は命じることができないため、「お願い」という曖昧な形で存続させ、法的には、それぞれの教職員が「勝手にやっている」という扱いになります。何とも理不尽ですが、まずは法を知り、自分の権利を知らなければ、抵抗することもできません。
ここであげた以外にも知っておいた方がよい法令はありますが、まずは「憲法」「労基法」そして「超勤4項目(限定4項目)」を知っておきましょう。
まず自分の人権を知らなければ、子どもたちの人権も守れないと思いませんか?