「生徒の、生徒による、生徒のための会」をめざして

委員長が以前『クレスコ』に寄稿した文章です。

学校は誰のためにある?

決まりは先生が決め、生徒はそれに従う。それが当たり前だと思っていた。

自分が生徒だった頃、殴られて従わされたこともある。

「あのときはムカついたけど、自分が間違っていた。今はありがたいと思っている」

なんてことは全くなく、今思い出しても納得できない。

時は流れ、自分も教師となった。

職員室では、生徒を黙らせることのできる人が「力のある教師」とよばれ、そんな先輩のやり方をまねた。それが教師として正しい姿なのだと信じ、そうしたやり方に次第に慣れていった。しかし…

学校は誰のためにあるのだろう?

考えるまでもなく「生徒(児童)のため」のはずだ。

しかし多くの生徒と関わり、教育について学ぶにつれて、「このやり方は、本当に生徒のためなのだろうか」と疑問に思うことが多くなった。

確かに、教師が生徒を管理し、枠の中に閉じ込めておけば、うまくいっているように見える。自由に意見を言えない空気を作っておけば、大きな問題も起こらない。

だが、それは教育と言えるのだろうか?

教師に怯え、忖度しながら成長した子どもは、自分で考え、行動する大人になれるのだろうか。

生徒会活動は民主主義の第一歩

戦後、「生徒も学校運営に参加すべき」という理念がアメリカからもたらされた。誰かが決めた正解を上から押し付けるのではなく、個人を尊重し、意見を出し合い、みんなでよりよい意思決定を目指していく。

民主主義ってこれだ!

それまでの封建的な教育から180度の転換。そして、その核となるのが生徒会活動のはずだった。

「生徒の、生徒による、生徒のための会」として活動し、子どもたちは民主的な学校をつくる経験を積む。そして、民主主義社会を担う大人となっていく…はずだった。

戦後の「逆コース」の中、教育の民主化も後退した。生徒会は「生徒の会」ではなく学校の下部機関であるかのようになり、「生徒会活動は生徒の主体的な活動である」という建前すら知らない人が多くなった。

しかし、歴史は常に3歩進んで2歩下がる。封建的な空気は残っているものの、戦前の教育にまで戻りはしない。「生徒の主体的な活動」という建前まで否定されることはない。

であれば、その建前を現実に変えていけば、つまり生徒会活動を活性化していけば、「自ら考え、行動する」生徒を育てることができるのではないだろうか。

民主主義は歩いてこない。だから歩いてゆくんだね。

ベテランこそ生徒会顧問に

生徒会の分掌は若手教師にあてがわれることが多い。しかし校則問題に見られるように、時として生徒と学校の利害は対立する。そんなとき、校長にも意見できるようなベテランでなければ、なかなか生徒たちの代弁者とはなりにくい。そこで私は考え、行動した。

45歳で生徒会顧問となった。

本部役員会議では、「一般の生徒たちに、生徒会は自分たちのもの」と認識してもらうために、本部役員に何ができるかを話し合った。

本部の生徒たちは、学校に不満はないが疑問をもっていた。

一方、多くの生徒たちは、疑問はもたずに不満だけを抱えていた。そして彼らにとって生徒会活動とは、「学校に手伝わされる面倒なもの」であり、「自分たちのもの」という発想がなかった。

この思考停止状態から抜け出すために、生徒総会の活性化を図った。シャンシャン総会からの脱却だ。生徒総会本来の意味について、全職員、全生徒に考えてもらい、各学級で率直な意見を出してもらう。そして総会の場で自由闊達な議論をし、本部役員がそれを持ち帰って再検討、要求書にまとめて校長と話し合う、という手順を踏んだ。

生徒に率直な意見を言わせることへの反対意見もあった。当然、校則への不満が出てくるからだ。しかし、目的は校則を変えることではない。思考停止せず、考え、議論する経験を積むことだ。彼らがいつか、「考え、行動する大人」になれるように。

まず成長すべきは教師自身

自由に発言させれば、権利とわがままをはき違える生徒が出てくるかもしれない。

そんなときこそ教師の出番だ。威圧して意見を封じ込めるのではなく、たとえ稚拙な意見であったとしても議論の俎上にのせる。そして、権利とわがままの違いも考えさせるのが、真に責任ある大人の態度ではないだろうか。

もちろんそれは簡単ではない。私たち教師自身が学び続け、合理的な根拠を示す。そして、生徒たち一人一人へのリスペクトを忘れずに話し合うことが大切だ。

生徒会活動を活性化することによって、一番成長するのは教師の方かもしれない。

教師が変われば生徒が変わる。生徒が変われば学校が変わる。学校が変われば未来が変わる。

私たちの仕事には未来を変える力がある。

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