教員給与の上乗せ2.5倍以上に!?

2023年5月10日 NHK NEWSWEB

人手不足解消へ 教員給与の上乗せ2.5倍以上に 自民が提言案

この見出しだと、教員の待遇を大幅に改善して教員不足を解消する前向きな案に見えます。

現在の4%から10%になると、仮に給料30万円なら、教職調整額が12000円から30000円になります。それはもちろんありがたいですが、「調整額が増えたのだから超過勤務も仕方ない」となってしまったら本末転倒です。(記事の中では時間外の在校時間は月20時間を目指す、とあります)

それに、「教職調整額が上がるなら教員になろう!」と思う人がいるのでしょうか? 調整額を目当てに、教員になった人を見たことがありません。これが教員不足対策にならないのは明らかです。

「働き方改革」の目的は業務を削減して、人間らしく生きられる働き方を実現することだったはずです。お金の問題にすりかえるべきではありません。

また教育新聞の記事「真に頑張っている教師が報われるよう、職務の負荷に応じたメリハリある給与体系を構築」とあるのが気になります。「頑張っている先生」と「頑張っていない先生」で給与に差をつけるということです。

提言
①教職調整額の増額(少なくとも10%以上に増額)
②新たな級の創設(メリハリある給与体系の構築)
③管理職手当の改善(管理職に優れた人材を確保)
④学級担任手当の創設(学級担任の職務の重要性)
⑤諸手当の改善(主任手当の改善・拡充等)

「頑張っている先生」と「頑張っていない先生」って、どう分けるのでしょうか? 「質の高い教師」って、どう判断するのでしょうか? 

「新たな研修履歴」とやらで、教委の定めた研修を数多くこなした先生は「頑張っていて質が高い」と評価されるのでしょうか? 組合などで行っている自主的な自己研鑽は評価されず、「頑張っておらず質が低い」となるのでしょうか?

学校教育はチームで行います。ビシッと管理するタイプの先生もいれば、周りと馴染めない子どもたちの拠り所となるタイプの先生もいます。担任も副担任も対等な同僚として協力し、子どもたちの最善の利益を目指しています。

先生を評価で分断し、「これが正しい教師像だ!」というステレオタイプを押し付け、金太郎飴のような先生ばかりになれば、学校は息苦しく、つまらない場所になっていくでしょう。

そして、それ以上に心配なのが、定時で帰る人に対して「あの人は残業しないのに調整額がつくなんてズルイ!」という分断が教職員の中で起こってしまうことです。そうなれば、ますます帰りにくい雰囲気になり、長時間労働が蔓延します。

教職調整額って何だ!?

教職調整額を「残業代」だと誤解してしまうと、「あの人は残業しなくてズルイ」という不満も出てきます。そもそも教職調整額って何なんでしょう?

労働基準法は、労働者に時間外勤務をさせる場合、割増賃金を支払うことを義務付けています。使用者にペナルティを課すことで、働かせ過ぎを防ぐためです。教職調整額を上げても使用者へのペナルティにはならず、働かせ過ぎを防ぐ効果はありません。教職員を分断するだけです。

1960年代、多くの教員が超過勤務手当を求める訴訟を起こしたため、政府自民党は給特法を制定(1971)しました。給料に教職調整額4%を上乗せする代わりに「残業代を払わない」という法律です。

この給特法が「定額働かせ放題」の元凶であることは事実ですが、「時間で測れない部分が多い」という教職の特殊性に鑑みると、実は一定の合理性もあります。

私たちは自分の時間を使って、常に自己研鑽し、授業の準備をし、教育について考えています。それ以外でも読書、スポーツ、個人的な旅行など、学校内外で経験する私たちの人生すべてが、私たちの人格を形づくります。そして、それらすべてが教育という営みを通して子どもたちに還元されています。

教職調整額は、そのような単純に時間で区切れない部分への上乗せであり、時間を切り売りする「残業代」ではありません。教員の仕事は「時間で区切れない」からこそ、校長は、誰もがきちんと定時で帰れるようマネジメントする義務があります。「帰れるけど、帰らない」のは教員個人の裁量です。

でも現状は、そもそも定時で帰れない状況を放置しておいて(部活終了時刻が18:30とか)、「給特法があるから自己責任」という、法の主旨から逸脱した運用がされています。中には、「教員は残業代を調整額として既にもらってるんだから、文句言わずにやれ」と、パワハラしてくる人すらいます。

限定4項目

給特法は、校長が時間外労働を命じることができる業務を4つに限定しています。

①生徒の実習に関する業務(高校)
②学校行事に関する業務
③教職員会議に関する業務
④非常災害等やむを得ない場合に必要な業務

給特法は「いくらでも残業させてよい」という法律ではなく、「この4項目以外は残業させてはならない」という法律です。(この4項目も、命じることができるのは、本当に仕方がないときだけです)

今ある限定4項目を守れば、異常な長時間労働は起こり得ません。でも全然守られていないですよね。法令は、私たち自身が声をあげ、守らせなければ守られないのです。

権利があっても、行使しなければ絵に描いた餅です。多くの人が法を知り、声をあげることで未来は変えられます。でも、黙っていれば変わりません。

・声をあげ、自分らしく生きる未来
・沈黙し、誰かのいいなりになる未来

あなたは、どちらの未来を選びますか?

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