これからの学校部活動と「地域クラブ活動」を考える
部活のあり方を決めるのは誰?
全群教も加盟している全教(全日本教職員組合)では部活動問題検討委員会を立ち上げ、時間をかけて議論してきました。「こうすれば誰もが満足!すべてが解決!」という特効薬はありませんが、現時点での到達点としての討議資料が完成しました。各学校で、ざっくばらんな議論がなされることを期待します。
部活動のあり方を決めるのは文科省でも教委でもなく、それぞれの学校です。
法令は、「部活動を設置しなければならない」とも、「大会に参加しなければならない」とも命じておらず、それらは各学校ごとの裁量になります。つまり一番大事なのは、それぞれの学校内での話し合いだということです。
※文科省や教委にまず大ナタを振るわせることは大切です。でも各学校で議論する土壌を作らないと、また元に戻ってしまいます。コロナで減らした業務が、いつの間にか戻ってしまったように。
目指すべき方向性は?
全教部活動問題検討委員会での議論を通して見えてきた方向性は
①強制性の排除が絶対に必要
②本来の部活動に立ち戻る
③みんなで話し合って決める
というものです。
本来部活動は、「学校のカリキュラムに縛られず、課外の時間に生徒たちが自主的に集まり、自治的に運営する活動」であり、生徒会活動の一環です。その本来の目的を置き去りにして、管理的・支配的・強制的になってきた歴史があり、今多くの教員や子どもたちが苦しめられています。
この「自主・自治」という本来の目的を無視したまま、上からの地域移行を強引に進めても、子どもたちを「管理的・支配的・強制的」に縛り付ける新たな苦しみが学校の外側に生まれるだけになる可能性が高いと考えます。
私たちは文科省や教育委員会を「上」とは考えておりませんが(役割が違うだけで、組織同士や個々の人間同士は対等です)、分かりやすくするために便宜上、「上」という語を用います。
さらに、今のあり方を残す前提で議論が進んでいるので、仮に地域移行が断行されても、「今まで通り教員への顧問強制が続くこと」や「子どもたちの権利としてではなく、ビジネスの対象としての部活に変容してしまうこと」などが危惧されます。
上からの改革を待つのではなく、「部活動の本来の目的とは何なのか?」「法的位置づけはどうなのか?」「学校教育として関わるべき範囲や、学校として提供できるリソースはどこまでか?」といった根本的な問題点を共有した上で、教職員、生徒、保護者の間で議論し、学校ごとに方向性を決めていくことが望ましいと言えます。(ただし、顧問強制という違法行為ありきでの議論は論外です)
今、真っ先にやるべきことは?
「強制性の排除」が喫緊の課題です。子どもたちへの入部強制は、だんだんなくなってきていると思いますが、教員への顧問強制は今もあります。これは現在の教員不足の一因でもあり、教育全体に関わる重要な課題です。
そもそも本人の意思に反して時間外労働を強制するのは重大な人権侵害であり、憲法違反です。子どもたちの人権を守るべき学校で、教員への人権侵害を容認することは矛盾でしかありません。
全群教は毎年の交渉の中で、「部活顧問の強要があってはならないこと」と「強要がないよう管理職を指導すること」で、県教委と合意しています。だから明確な強制はないはずです。しかし、「断れない雰囲気」は確実にあります。(断っているのに、校長室でずっと圧をかけられ続けたという事例もあります)
断れない雰囲気を作ることで、今の脱法的な部活のあり方を温存する悪弊は断ち切るべきです。そのためにもまず、全員顧問制をやめるべきです。すぐに完全希望制が実現できないなら、学校の中で2人でも3人でも、顧問をもたない教員がいる体制を作ることから始めるべきではないでしょうか?
生徒に、自治の力をつけるには?
部活に入らない生徒や、顧問をもたない教員がいる風景が当たり前になれば、過熱も自ずと抑えることができるはずです。勝利至上主義と決別し、部活の本来の姿である「生徒による自治」を大切にして、「引き受けてもよい」と同意した人だけが顧問をする、持続可能な部活動を作る時が来たのではないでしょうか?
県内でも、校時表を見直し、教員の勤務終了時刻を部活終了時刻にしている学校もあります。賛否は分かれるかもしれませんが、学校独自で工夫して決める姿勢は、まさに学校の自治です。
国主導の地域移行は頓挫しました。今のあり方を残すことを前提とし、予算もつけないのだから当然です。だからこそ、各学校で自主的・自発的に話し合っていくことが大切です。まずは教師自身が生徒の手本となるような、自治の力を見せたいものです。