命を最優先に考えた対応を(熱中症対策)

熱中症対策に関する要求書

山形県米沢市で部活帰りの中学生が亡くなるという痛ましい事故が起こりました。大きなショックを受けると同時に、「とうとう起こってしまったか…」という思いも抱きました。日本中で、異常な暑さの中で毎日部活をすることに不安を感じながらも、なかなか中止の決断ができない先生(や校長)がたくさんいると思います。

本来部活は生徒たちの自主的・自発的な活動であり、教委が「やれ」とか「やるな」とか言うべきものではありません。自主活動ですから、生徒自身の判断でやる・やらないを決めるのが本来の姿です。そして生徒が「やりたい」と言っても、暑すぎて危険と判断すれば、顧問が「今日は中止にしましょう」と助言するのが、想定されている形です。(指導要領を素直に読めば、そうなります)

しかしながら実際の部活のあり方がそうなっていないことは、誰もが知っています。残念ですが、教委から一律に「中止」と言われない限り、危険だと思っていても なかなか中止にはできないのが現状です。

全群教は現場の声を集めるため、緊急でアンケートを実施しました(2日間で53件もの回答がありました。それだけ不安に思っている人がいたということで。そして「生徒の命を守るため」という一点で要求書を提出し、県教委健康体育課と交渉しました。

県教委との交渉結果

「危険だと分かっていても中止にしづらい」現場の実態を伝え、せめて「熱中症警戒アラートが発表されたときは、県教委から中止させること」を要求しました。

この要求内容については賛否両論あるとは思います。「余計な要求をするな」と思う方もいるでしょう。

しかし、「命や健康よりも優先すべきものはない」というのが全群教の考えです。指導要領上、部活動は「やらなくてはならないもの」ではなく、「やってもよいもの」です。『危険な暑さ』の中、「やってよい」とすることが、長い目で見たときに子どもたちのためになっているのか、議論が必要ではないでしょうか。

実際に命を落としたり、後遺症を負ったりするのは数百万人に一人かもしれません。しかしその一人は、数百万分の一ではなく、誰もが かけがえのない一人なのです。

参考:5分で伝えるNHKスペシャル「学校事故」
※ぜひ見てほしい動画です。

県教委としては、「国の動向を見つつ、今後も注意喚起し、先生方や生徒たちの意識を高めていく」ということでした。私たちは「それでは今までと変わらない。中止の数値基準を設けるべきだ」と主張しましたが、議論は平行線のままでした。

熱中症アラートは、国(環境省・気象庁)が『危険』を警告するものです。県教委には、「生徒の命を最優先に考えた対応をしてください」と重ねてお願いして交渉を終えました。

その後、県教委から「一律中止にはできないが、更なる注意喚起をした」と連絡がありました。教委も真剣に考えているとは思いますが、効果があるかどうかは疑問です。この件に関して、私たちは「要求を通したい」わけではなく、「一人も死なせたくない」だけです。多くの場所で議論が始まることを期待しています。

保護者の方からの話

うちの娘が、危うくこういう事態(山形の事故)になりかねなかったんです。でも、先生や外部コーチがすぐに気が付いてくれて助かりました。そして、私もこの暑さで危険だと思っていたので、送迎していたから、よかったです。

室内気温が39.8度だったとか。体調が悪くなる、、という感覚は全くなくて、気がついたら、先生に支えられて、扇風機に当たっていたそうです。

私も、毎日暑い中心配でしたが、「気をつけてね」くらいしか言えなかったです。先生も、危険だなぁってわかっていながらも、「部活を中止に」というのが中々言い難いと言っていました。
※この方は、学校や顧問の先生に、非常に好意的な方です。

顧問の先生は一生懸命やっています。
学校は熱中症に気を配っています。
子どもたちは頑張っています。
保護者も応援しています。

誰もが善意で行動しているが故に、「部活を中止すべき」と言う人は悪者になります。「生徒のため」と言われると、校長でもなかなか止められません。だからこそ教委が『悪者』になって止める以外ないと考えます。市町村教委レベルで一定の制限をしている自治体もありますが、県として基準を打ち出した方が、現場はやりやすいはずです。

熱中症警戒アラートとは

熱中症警戒アラートは、環境省が発表している全国の暑さ指数(WBGT)について、33以上になると予測される地点があるとき発表されます(発表は都府県単位)

WBGT31以上は『危険』で、「特別の場合以外は運動を中止する。特に子どもの場合には中止すべき。」とされています。

特別の場合とは?

①医師、看護師、熱中症の対応について知識があり一次救命処置が実施できる者 のいずれかを常駐させ、救護所の設置、及び救急搬送体制の対策を講じた場合。

②涼しい屋内で運動する場合等。

この「特別の場合」の定義を満たす状態を学校で恒常的に確保することは難しいでしょう。であれば、「WBGT31を超えたら運動は中止とする」ことが生徒の命をあずかる学校の責任であるはずです。

しかし、WBGTは計る場所や計り方によっても数値が変わります。とすると、「熱中症警戒アラートが発表されたら中止」というのが、誰にとっても分かりやすい指標であると考えました。

いずれにせよ、近年の暑さは20~30年前の暑さとはまったく違います。熱中症のリスクについて、真剣に考え直すべき時期に来ているのではないでしょうか。

参考(三重県教委通知)

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