ニュースを授業に生かす
アルツハイマー病の新たな治療薬について、製薬大手の「エーザイ」は最終段階の治験の結果、症状の悪化を抑える効果が確認できたと発表しました。会社は、来年3月末までに国内や欧米で承認申請を行うとしています。
2022年9月28日「NHK NEWS WEB」より
エーザイ株は29日の取引で気配を切り上げ、前日比14%高となる7704円の値幅制限いっぱいで大引け比例配分された。買い注文が殺到した前日に続き、アルツハイマー病新薬「レカネマブ」の第3相試験で症状悪化を抑制する効果が示されたことが評価された。
2022年9月29日「Bloomberg」より
「学校の勉強は教科書の中のもの。現実社会とは関係ない」と思われがちですが、ちょっと視点を変えて現実の出来事と教科書の内容を結び付けてあげると、子どもたちの関心のもち方は大きく変わります。教科書をなぞったマニュアル通りの授業を受けて、勉強の楽しさを感じる人はいないですよね。
アルツハイマーの画期的な治療薬を作った会社の株があがったそうですよ。この会社の株をもってたらめっちゃ儲かったってことだよね~。いや~、先生も買っておけばよかったよ。ところで、そもそも株って何なんだろう???
株のルーツは大航海時代。冒険商人は思います。「あ~、船欲しい~。インドで胡椒を買ってヨーロッパで売れば超儲かるのに、船を作って人を雇って、航海に行く金がない…」
仮に1億円の借金をして航海に出ても、途中で沈没したら元手はパー。誰もそんなリスクを負ってまで金を貸してはくれない。でももし100万円ずつ出資してくれる人を100人集めたらどうだろう…???
「儲かったら出資額に見合った配当金を支払います。でも利益が出なかったら儲けは諦めてください。これは借金ではなく、あなたはこの船の100万円分の持ち主になったのです。利益が出続ける限り、あなたは配当金を受け取り続けます」これが株です。
大きな事業を起こすためには大きなお金が必要。大きな事業で大きな成果が出れば、多くの人の生活が豊かになる。
今回のニュースに当てはめてみると、素晴らしい薬を作るためにはお金がかかる。そのために株で資金を調達し、人間を救う薬を作る。資本主義が発達することで、多くの人が救われる。ここまでがアダム・スミスの想定した古典的な自由主義。
ところが、資本主義は暴走する。
人間にとって役立つ商品を開発した企業の株は配当金が上がる。みんながその株を欲しがるので、株の値段が上がる。すると人々は気づく。「あれ、安いときに買って、高いときに売れば儲かるんじゃね?」
その事業を支援するために株を買うのではなく、売買の差額で儲けようとする人も出てきて、株はギャンブルになる。そして企業の価値基準は「人間にとって役立つ商品を開発する企業」ではなく「とにかく売れる商品を開発する企業」となっていく。
「売れるのは必要とされているから。必要とされているのだから人間の役に立っている。だから儲けることは正義」と考えるのが新自由主義的思考。儲けることが正義なのだから、儲かることに政府もどんどん支援する。岸田首相も「稼ぐ力を強化する」と明言している。
良いか悪いかは別として、多くの国が新自由主義的な政策をとっている。それらの国の代表的な政治家がサッチャー、レーガン、中曽根、小泉、安倍。それらの国では格差が拡大していった…
実は、教科書に書いてあることと現実社会のできごとはつながっています。例えば株式について、教科書の記述通りに教えてもピンときませんが、ニュースと絡めて話すと実感をもちやすくなります(「これが正しい」と自分の正義を押し付けるのはダメですが、子どもたちが自分の考えをもつための材料として、事実を伝えることは大切です)。
でも教師自身が長時間過密労働で疲弊してしまうと、授業についてじっくり考える時間的余裕も、精神的余裕もなくなっていきます。疲れ果て、追い詰められた状態で、よい授業などできるはずがありません。
だから、教師が組合に加入し、労働環境の改善を要求することは、子どもたちによりよい教育を保障することにつながります。
さらに全群教では、労働環境の改善を求める活動とともに、教育研究活動(どんな授業をするのか、どんな風に子どもと接するのかなどについて、みんなで学び合う活動)も行っています。
よりよい教育を実現するために、あなたも全群教に加入しませんか?