【緊急】市教委交渉
ある市教委から「マイナンバーカード普及促進に係るお願い」なる文書が各学校に発出され、「各家庭に確実に目を通していただけるよう声かけすること」が求められました。これは不当な業務であるだけでなく、極めて大きな行政上の問題であると認識し、緊急交渉を申し入れ、撤回を求めました。
なぜこれが大問題なのか?
戦前・戦中、教育は国家によって支配されていました。そして教師は子どもたちに「日本は正しい戦争をしている」という政府からの一方的な情報を垂れ流し、教え子を戦場に送り続けました。
その反省から「教育と政治は一体化してはならない」という教訓を得て導入されたのが教育委員会制度です。教育委員会は、地域の教育行政に責任をもつ独立した行政委員会であり、政府の下部機関ではありません。設置当初は公選制であり、政府の言いなりにならない独立性をもっていました。
今は任命制になってしまい、行政の一部署と思っている人もいるかもしれませんが、「教育と政治が一体化してはならない」という根本理念自体は変わりません。いや、変えてはならないのです。
政府からの一方的な情報、しかも教育とは何の関係もない政策推進のための情報を子どもたちに垂れ流すなど、絶対にあってはならないことです。
賛否両論
マイナンバーカードは国民の間で賛否が分かれています。行政によって個人情報が一元管理されることや、情報漏洩のリスクに不安をもつ人が多いからです。「モリ・カケ・サクラは嘘とごまかしばかりだけど、マイナンバーカードは大丈夫です」と言われても信用できません。だからこそ多くの批判が起こり、国会審議を経て取得は「任意」となった経緯があります。
政府への「不信感がある」から多くの人が作らないのだから、そんなに作らせたいなら「不信感をなくす」ことが必要です。そのためには「嘘やごまかしをしない」ことです(道徳の教科書にも書いてありますよね)。
なのに政府は、それはしないで莫大な税金を使ってポイントを付与したり、保険証との一体化を検討して、半ば脅しのようなやり方で作らせようとしたりしています。道徳性が疑われます。
教師の地位利用
テレビやSNSでCMを流すより、教室で担任が「マイナンバーカードを作りましょう」と言った方が効果は絶大です。だからこそ、それはやってはならないのです。
カードを作るも作らないも、個人の自己決定権に属する事柄です。反対意見も多い国策を、教師の権威を利用して誘導することは憲法違反も疑われる大問題です。教師個人の内心の自由も侵害しています。
保護者は学校からの依頼や通知に対して、「学校だから」という安心感を得ると同時に、「子どものために協力しなくては」と考えます。今回のようにマイナンバーカードの普及宣伝といった、教育の目的以外の情報を児童生徒を通して保護者に通知することは政治的中立性に反する目的外使用であり、教師の地位利用にもあたる重大な問題です。
交渉結果
市教委の担当者は、当初は問題の重大性を認識していなかったようですが、丁寧な説明により、「今回のやり方は不適当であった」と認めました。事実上の撤回と言えます。今後こういったことがないよう約束するとともに、不要な混乱を生んだことに対し、(現場の先生たちに)謝罪するようお願いしました。
私たちは「教委をやり込めてやろう」と思っているわけではありません。本当に子どもたちや教職員のためになることであれば協力します。
しかし忙しい毎日の中、「これは本当に子どもたちのためになることなのだろうか」という議論も合意形成もないまま、不要なだけでなく、不当な業務まで増える一方です。そんなとき、「これ、おかしいですよ!」と言う人がいなければ、異常なことが通常となり、恒常化していきます。
今回の問題も、高崎の組合員が「これ、おかしいと思うんだけど(怒)」と本部に相談してきたことで発覚しました。それがなかったら、多くの人が違和感を抱きつつ「上から降りてきたことだから仕方ない」と従っていたかもしれません。
多忙化と多忙感
不要な仕事が増えていくことで、物理的な「多忙化」が進みます。不当な仕事が増えていくことで、精神的な「多忙感」が増していきます。
「多忙化」や「多忙感」をなくしていくためにも、全群教は絶対に必要な存在です。あなたもぜひ全群教に加入してください。本当に子どもたちのためになる教育、教職員のためになる働き方を実現させていきましょう。