マイナンバーカード取得促進に教育機関を利用
県議会(2023年2月27日)で、「マイナンバーカードの取得推進を教育機関で行うこと」について、伊藤県議の質問に対して山本知事より回答がありました。要旨を抜粋し、問題点を考えます。
県下一斉の促進キャンペーン。これ自体は県が決めることなので、教職員組合として強く抗議しているわけではありません。知事自身が「交付金に差をつけて自治体間の競争を煽るのは間違っている」と言っていたのは ただのポーズだったということに対し、県民として抗議する必要はあるかもしれません。
これも、ニーズがあるならやればよいことです。役所にブースを設けるなど、既にやっていることを拡充していけばよい話です。
これが大問題です。
今までの記事でも示してきたように、「学校は政府の下部機関になってはならない」というのがその理由です。『政府の、政府による、政府のための政策』を、学校を通して子どもたちに押し付けてきた苦い歴史の教訓を経て、教育は政治の下請けになってはいけないと決めたのです。これは決して譲れない、民主主義の大原則です。
仮にすばらしい政府が進める すばらしい政策であったとしても、「政府が推進しているから」という理由で、学校を都合よく利用させてはなりません。
決められた手続きを、時の政府の意向で捻じ曲げてしまうことを認めれば、やっていいことと悪い事の境界が曖昧になってしまいます。それは『法の支配』を否定し、『人の支配』に戻ることを意味します。もし次の政府が無能で、おかしなことを始めたときにも歯止めが効かなくなってしまいます。
「政府が推進する政策を学校で広報すること」が日常になってしまえば、「国防への理解推進のために、社会教育の一環として学校で講座を開く」というようなことも可能になります。
知事が「問題ないと考えている」と言ったから問題がない のではなく、権力の行使について抑制的であるべき行政の側が安易にそう言ってしまうこと、そしてそれを私たち自身が無批判に受け入れてしまうことが大問題です。当然、教職員組合として受け入れることはできません。
知事が強力に推進し、議会で予算をつけ、教育委員会にお願いしたものは事実上の命令です。気概のある校長が「教育の独立性を守る」と突っぱねることは、法的には可能ですが、それをする校長がいるでしょうか? 仮にいたとしても、2~3年で異動するのだから、校長が変われば方針も変わります。
残念ながら、間違った政策であっても、権力側が強引に進めれば実行されてしまいます(国の政治を見ればよく分かります)。でも、「おかしいと思いながら黙って従う」のか、「おかしいことには『おかしい』と言う」のかは、自分で決めることができます。
全群教は、おかしいことには「おかしい」と言い続けます。