先生が足りない!!

年度当初で2065人不足

先生が足りません。
ここ数年、ニュースでも話題になっている教員未配置問題。群馬県でも段々と事例が増えてきて、全群教に悲鳴のような声が届いています。群馬でも年度途中の産育休・病休代替の先生が配置できず、現場の負担増によって何とかしのいでいる状態です。(県内のある中学校では3学期に担任が3名休みに入りましたが、代替は0名でした。つまり純粋な3減です)

全国ニュース(2022年1月31日)になっていたように、年度当初から2065人不足しているのですから、2月や3月になれば大幅に欠員が生じるのは当然です。文科省の担当者は「授業が長期間実施できないなど学びが止まっているような事例はないと考えている」と話していたようですが、現場の先生たちが無理をしてしのいでいるだけです。

急な病休代替の先生が見つからないのはともかく、何カ月も前から分かっている産休代替の先生が来ないというのは大問題です。場合によっては専門外の教科を教えることもあり、先生の負担増の問題だけでなく、子どもの教育権を侵害しているという問題もあります。これは違憲状態であり、「代替の先生を探しているけど見つからない」で済ませていい問題ではありません。

※全群教は、指導主事の派遣等も含めた代替案を再三要求しています。

そもそも なぜ先生が足りないの?

狭い世界の中にいると、「今の状態が当たり前」と思ってしまいます。一度立ち止まって、「この惨状は当たり前なのだろうか?」と疑問をもって世の中を見つめ直すと解決への糸口も見つかるかもしれません。

例えばデンマークでは「人間は病気にもなるし、先生だって休むのが当たり前」という前提で、誰かが休んでも大丈夫な、ゆとりのある勤務体系をとっています。他方、日本では「誰も休まない」という前提で勤務体系が構築されているので、誰かが休むとすごく大変です。

本当の問題は「誰も休まない」という前提そのものであり、ここを変えていく必要があります。しかし、「今の状態が当たり前」と思ってしまうと「(自分が)休んだら申し訳ない」とか、「(他人が)休んだら困る」と考えるようになってしまいます。

他県の事例ですが、妊娠した先生に「迷惑だ」と言い放った校長や、インフルエンザに罹患した先生に「まず謝罪しろ」と言った校長もいたそうです。そんな学校で、心豊かな子どもを育てる教育なんてできるわけがありません。

文科省は何してるの?

文科省は先生のなり手を増やすために、「教師のバトン」プロジェクトで「現役の先生たち、若者が教師になりたいと思うように情報発信してください!」と投げかけたり、大学3年から教員採用試験を前倒しで受けられるように改革しようとしています。

信じられない発想です(゚Д゚;)

①異常な長時間労働
②病休者を量産するストレスフルな労働環境
は放置したまま、やりがいアピールや青田買いでその場を凌ごうなど、愚策中の愚策です。

そもそも文科省や教育委員会は本当に「先生が足りない」と思っているのでしょうか。「先生が足りない」と言いながら、なぜ教員採用試験で落とすのでしょうか。なぜ採用試験で落としておきながら臨時教員として雇い、正規教員と同じ仕事をさせるのでしょうか。本音は「先生が足りない」のではなく、「不安定雇用で都合よく働いてくれる先生が足りない」ということです。

「低賃金で不安定、無償の時間外労働が無限にあるけれど、やりがいはあるので来てください。あ、もちろん部活もやってくださいね。休日も休めませんけど、いいですよね♪」って、人が集まるわけがありません。

全群教にできること

①対症療法(症状を抑える治療法)
②原因療法(原因を取り除く治療法)
両面から対応していくことが必要です。

対症療法は、県教委、市町村教委、各校の校長などと交渉していくことです。私たちの喫緊の要求は「不要不急な指導主事訪問をなくし、指導主事が授業すべき」というものです。全群教としては、指導要領を聖書のようにあがめて、マニュアル的な授業を押し付けること自体に反対なので指導主事訪問自体不要という意見ですが、その部分を差し引いたとしても、「人が足りなくて免許外の教員に授業させている状態なのに、指導主事訪問は行う」という判断はバランスを欠いていると考えます。

また、仕事を減らすよう要求していくことも大切です。「あれも必要、これも必要」と言っていたのでは永遠に仕事は減りません。学校の意思決定の権限は校長にあります。「こういう状況なので、これはできません」とか「これはやりますが、こっちはできません」と、校長に情報提供したり、交渉したりしていくことも必要です。明らかに勤務時間を超過する仕事を頼まれたら、「勤務時間内に終わらないことはできません」と断ることも大切です。何でもかんでも引き受けていたら、校長には「仕事を減らさなければならい」というインセンティブが生まれないからです。

病休を産み出すストレスフルな環境を変えていく力も全群教にはあります。職場に全群教の組合員がいれば、パワハラなどの悩みを聞いて、本部で対応することも出来ます。そもそも組合員がいるだけでも、管理職はパワハラに敏感になり、抑止力となります。全群教の組合員を増やすことは対症療法であり、原因療法でもありますね。

原因療法は、先生を増やすことです。これは全群教も加盟している全国組織 全教(全日本教職員組合)が中心となって文科省などに働きかけを行っています。ただし、財務省は教職員をコストと考え、人的予算を増やす気配はありません。これは政治の問題なので、日本の世論全体が「もっと先生を増やすべき」という方向に向かっていかないと難しいものです。現場から声を上げながら世論に訴えかけていくしかありません。
※「人を増やせと言う前に、部活などの教育課程外の活動を減らせ」という財務省の言い分も一理あります。

またようやく、世紀の愚策「教員免許更新制」は廃止に向かって動き出しましたが、行政は新たなブルシット研修制度を作り出そうと画策していたり、変形労働時間制の導入もあきらめていなかったりします。これら、無駄な多忙を生み出すものには持続的に対処していくことが必要です。

個人としてできること

県教委交渉で現場の苦境を訴えると、「働き方改革は先生方の意識を変えていただかないと進まない」と言われます。「事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」と言いたくなります。(「踊る大捜査線」若い方は知らないですよね・笑)

ただし、県教委の言い分も一理あります。

給特法という法律がある以上、公立学校の教員に残業代は発生しません。よって校長には早く帰らせるインセンティブがないので、私たちが自分の意思で帰らない限り仕事は終わりません。

私たちは教師ですから、子どもたちのために「あれもやりたい、これもやりたい」「こんな授業をしてみたい、もっと深く教えたい」と思うのは自然なことです。そしてプライベートの時間を授業研究に費やすのも大いに結構だと思います。

しかし中には「教師だったら自分の時間を使ってこれをやるべきだ。私が若い頃にはそうやった!」と、自分の価値観を押し付けてくる人もいます。さらに部活などは、時間外労働が当然であるかのようにシステムに組み込まれています。
「だから早く帰れない」ではなく、その中でも「できないことはできないと言う」ことも大切です。酷な言い方ですが、教員自身が「できないことをできないと言ってこなかった」から仕事の範囲が肥大化し過ぎて、首が回らなくなってしまったところもあります。

もちろん、先輩から学ぶのは大切なことですし、すでにあるシステムを変えていくのは容易ではありません。しかし、「教育とは何か」「自分はどんな教育がしたいのか」「この仕事は本当に必要なのか」といった哲学をもつことは個人としてできることです。いや、個人でないとできないことです。そして哲学をもつためには学ばなければなりません。

全群教には「毎日定時退勤しています」という人もいます。もちろんやるべきことをやっての上です。その上で仕事に優先順位をつけ取捨選択し、おかしいと思うことにおかしいと声を上げています。そして「教育とは何か」について学び続けています。
※「そういう人がいる分、他の人にしわ寄せがいっている」と批判する人もいるかもしれません。しかし仕事の総量を減らさない限り、誰かの負担が増加します。仕事の総量を減らす権限をもっているのは校長です。そして誰かが断らない限り、校長に仕事の総量を減らすインセンティブは生まれません。

教育に対して哲学がないと、「指導主事や校長、先輩が言っていることが常に正しい」と思考停止で受け入れてしまいます。また逆に、感情的に反発するだけということにもなりかねません。教育の手法に絶対的な正解はありません。「権威のある人が言っていることが正しいとは限らない」という意識をもちつつ、「教育はどうあるべきか」について、一人一人が深く考えていくことが大切です。

深く考えるためには「ゆとり」が必要です。一人一人が「ゆとり」をもつためにはどうすべきかを一緒に考えていきましょう。そのために連帯し、要求していきましょう。そして、まずは自分の半径5mから変えていきましょう。

「先生が足りない」という、一人ではどうにもならない状態を変える大きな運動も、必ず一人の行動から始まります。そして全群教には、そういう思いをもった一人一人が集まって、「よりよい教育」「よりよい働き方」を目指して学び、行動しています。小さな力も集まれば、大きな力となるのです。だからあなたも一緒に行動しませんか?

「働き方改革」は会議室で起こるんじゃない!
現場で起こすんだ!!

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