5月3日は憲法記念日です

世界で初めて憲法ができた国は?

5月3日は憲法記念日です

憲法記念日といっても、多くの人にとっては「理由はよく分からないけど祝日で嬉しい」というくらいかと思います。しかし、この記事を読んでくれている先生たちは、「憲法について子どもたちに伝えたい!」と思っているのではないでしょうか?

でもいきなり「憲法とは…」と語り出しても、子どもたちは興味をもってくれません。そんなときは、ちょっとしたクイズを出してみてはどうでしょう?

問題:世界で初めて憲法を作った国はどこでしょう?

そう聞かれると、意外と難しくないですか?

正解は、「世界初の成文憲法が作られたのはアメリカ(1787年)」ということになります。「イギリスじゃないんだ!?」と思うかもしれませんね。確かに憲法発祥の国というとイギリスなのですが、イギリスには今でも成文憲法はありません。更に「実は、イギリスっていう国はないんだよ」なんて話すと、子どもたちは「???」となって、興味をもってくれると思います。

また同時期(1791年)にフランスでも憲法が成立しています。この頃日本は「寛政の改革」真っ最中。「日本では、『贅沢するな~、米作れ~』と言っていたころ、アメリカやフランスでは憲法を作ってたんだよ」なんて話ができますね。

「先生~、17条の憲法が最初じゃないんですか?」なんて質問が出てきたら最高です。

「憲法」は「Constitution」という英語を訳したもので、1873年から使われているようです。日本に存在しなかった「Constitution」という言葉を、昔からあった「憲法」という語に訳してしまったことが、日本人が「憲法とは何か」を理解しにくい一因になっていると思います。例えば「アナウンサー」を「話者」などと訳したら、ニュアンスが伝わらないですよね🤔

憲法を守るのは誰?

問題:憲法を守らなけれならないのは誰でしょう?

①国民
②政府

これは最近知られてきたでしょうか?

正解は政府(正確には政府を含む国家機構全てですが、分かりやすくするために「政府」と表現します)です。「憲法」と「法律」の区別がついていない人は結構います。

国民が守らねばならないのは「法律」です。でもその法律を決めるのは政府(もちろん正確には国会です)なので、ヤバイ人が権力を握ってしまうと、ヤバイ法律を作ってしまいます。そして国民は「法律」に従わねばならないので、独裁政治の出来上がりです(ロシアやミャンマーを見れば分かります)。だからそうならないように国民が政府を縛るために作られたのが「憲法」です。

絶対王政の時代、抑圧され続けた人々の怒りが爆発し、イギリスやフランスで革命が起こりました。多くの犠牲を払い、市民が政府の暴走を縛るための鎖として手に入れたのが「Constitution」です。

「Constitution」という語が「憲法」という言葉に訳されました。「憲法」とは、「おきて」とか「きまり」という意味です。「Constitutionは市民が政府から勝ち取ったもの」という歴史を知らないと、「憲法はエライ人が作り、下々の者が守る決まり」という誤った理解がされてしまいます。

余談ですが、ある政治家が「日本には17条の憲法があった。だから日本は世界で最初に憲法を作った国だ」と話しているのを聞いてズッコケたことがあります。その人が本当に歴史を知らないのか、知っていて人々を騙そうとしているのかは分かりませんが…

日本国憲法は予言の書

日本は敗戦後、ようやく国民主権の「日本国憲法」を手に入れました。日本の歴史上初めて、国民が国家を縛ることが可能になりました。

しかしいくら素晴らしい憲法があっても、人々が中身を知らなければ、そして声を上げて政府を縛らなければ、権力は必ず腐敗し、暴走します。そして暴走した権力が行きつく先は戦争です。

戦争を始めるのは一般市民ではありません。政府です。そして愚かな為政者が始めてしまった戦争を止めるのは容易ではありません(ロシアやイスラエルを見ればよく分かります)

だから戦争は、絶対に始めさせてはいけないのです。そして戦争を「始めさせない」ように政府を縛るのが憲法であり、主権者たる私たち国民なのです。

 

憲法の条文から1つだけ紹介します。

この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

日本国憲法 第12条

12条には、「憲法はあなたたちに自由と権利を保障するけど、これに効力をもたせるためには、あなたたち自身の不断の努力が必要だよ」と書かれています。

まるで「予言の書」です。

人間は、超能力で未来を予知することはできません。
しかし歴史を知り、過去から学ぶことで、未来を予測することができます。
この条文を書いた人は「いつか人々の自由や権利を縛る政府が現れる未来」を予測していたのです。

悲惨な戦争が終わったばかりで、人々は「戦争だけは嫌だ」と、今は思っている。しかしまたいつか愚かな政府が現れ、戦争へと向かっていくだろう。だから未来の国民よ、この憲法を使って政府をきちんと見張りなさい。決して不断の努力を忘れてはいけないよ。

12条にはそんなメッセージが込められているように感じます。そして、その先人からのメッセージを子どもたちに伝えることができるのが、私たち教師です。

未来の平和は教室から始まります。だからみなさん、私たち教師自身が憲法を学び、子どもたちに伝えていくことが大切です。

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