壁ドン教育!?

壁ドン教育!?

「壁ドン教育」というワードがちょっとしたニュースになっています。

どんな内容かというと、内閣府男女共同参画局の「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」に出席した大学教授が、「恋愛弱者を支援するために、壁ドンやプロポーズの練習を教育に取り入れたらどうか?」と提言したというウソのようなホントの話です。

女性は肉食化、男性は草食化
ハンサム・美人ほど恋愛経験豊か(容姿レベルは調査員が評価)
「恋愛弱者」に「恋愛支援」が必要。
「壁ドン・告白・プロポーズの練習、恋愛ゼミ」を教育に組み込む。

男女共同参画局資料「豊かで幸せな人生100年時代に向けた,恋愛の役割はなにか」より

少し引用しただけでもトンデモナイ内容です。これを公式の会議資料として使用すること自体が信じられませんが、これを題材として「政府は壁ドンを教育に持ち込もうとしている」とミスリードするような報道の仕方も問題の本質からズレていると感じます。(全群教としての公式見解ではなく、委員長の個人的な感想です)

問題の本質は?

「壁ドン教育を行う」というのは政府見解ではなく、この教授の意見の1つであり、いくらなんでも採用されるとは考えられません。

問題の本質はむしろ、この研究会の設立目的の方にあると思います。詳細は男女共同参画局のHPを見ていただくとして、設立目的を簡単に言うと「結婚と家族の在り方について整理する」というものです。

背景には少子高齢化があります。政府が導き出したい結論は「結婚し、子どもを産む若者を増やす」というものだと思われます。結論ありきで「少子高齢化は結婚しない若者のせいである」という歪んだ前提条件から議論がスタートしているから、「恋愛支援のために壁ドン教育をする」などという歪んだ対策が出てくるのではないでしょうか。

少子高齢社会の根本要因

少子高齢社会の根本要因は若者の側よりも、「産みにくく、育てにくい社会」の側の責任が大きいと思われます。(具体例は書ききれません。保育園落ちた、教育費の負担、長時間労働、老後不安、夫婦別姓や同性婚などの多様性を認めない制度、等々)

日本政府も何もしていないわけではなく、パパママ育休プラスなどの制度もあります。多くの抵抗があったであろう中、この制度を導入した官僚の方の努力には頭が下がりますが、本気で「産みやすい社会」「育てやすい社会」を作るには小手先の制度変更ではなく、抜本的な改革が必要です。

であれば、本来参考にすべきは「産みやすい社会」「育てやすい社会」を目指し、出生率を回復させたスウェーデンやフランスなどの事例ではないでしょうか。

「国家のために個人の行動を変えようとする」日本型ではなく、「個人を尊重するために国家の仕組みを変える」ヨーロッパ型のやり方は、学ぶ価値があると思います。

ん、個人を尊重?
聞いたことがありますね?

第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

日本国憲法

そうです。憲法(詳しくはコチラへ)に書いてあります。少子高齢化に歯止めをかける第一歩は、国民が政府に「すべての人を個人として尊重せよ」と要求し、憲法を守らせること なのかもしれません。

何と、壁ドンのニュースから少子高齢化、スウェーデンやフランスの出生率の話題、そして憲法13条まで話が広がりました。

スウェーデンやフランスでは結婚していないカップルが子どもを産むことも普通で、もはや結婚の必要性すら感じない人も多いそうです。もちろん、すべて真似せよというわけではありません。でも「そういう国もある」と知ることで、自分が「当たり前」だと思っていたことが、すべての人にとっての「当たり前ではない」ということに気づけますね。

授業で生かすには

授業の導入や帰りの会のスピーチなどに時事ネタを取り入れている先生は多いと思います。

そんなとき「壁ドンを教育に取り入れるなんて、バカバカしいニュースですね(笑)」で終わらずに、「何でこんなニュースが出てきたんでしょうね?」と思考を深めていく題材にすると、学びが広がります。ディベートの議題にしてもいいかもしれません。

別に「壁ドンのニュースを授業で話すべきだ」というわけではなく、あくまで一例です。ニュースって、何となく聞いていても楽しいものではありませんが、「本質的な問題は何なのだろう?」と深掘りしてみると意外と楽しいものです。

「勉強が嫌い!」と言っている子どもたちも、本当は「勉強が嫌い」なのではありません。「無意味だと思っていること(本当は無意味じゃない場合もありますケド…)をやらされるのが嫌い」なだけです。そんな子どもたちに勉強の本当の楽しさを伝えることができるのが教師という仕事です。すごく難しいですが、最高に楽しい仕事ですよね!

でもそういった授業の工夫を考えるためには、先生たちに時間的・精神的なゆとりが絶対に必要です。常に仕事に追われ、疲弊した状態でよい授業などできるわけがありません。

よい授業をするためにこそ、まともな労働環境を作っていきませんか?

そのために声を上げませんか?

そして「どんな授業したら子どもたちが喜ぶかなぁ」「どうやって教えたら勉強の楽しさが伝わるかなぁ」と一緒に楽しく悩みませんか?

全群教へようこそ(*´ω`*)

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