2023年度 確定交渉報告②

30人以下学級の実施について

県教委回答

本県では、国の方針を先行する形で、中学校第3学年まで拡大して35人以下学級編制を実現している。定数改善の必要性は群馬県教育委員会としても認識しており、引き続き、国へ要望していきたい。

全群教コメント

「国の方針を先行する形で」と誇っていますが、十分な加配がないので、現場は苦しくなっています「なぜ学校は、こんなに人が足りないの?」参照)。学級規模を小さくしていくことは絶対に必要ですが、きちんと人をつけてから誇ってほしいものです。

特別支援学級の学級編制基準の引下げ及び教職員の配置について

県教委回答

特別支援学級の学級編制基準の引下げの必要性は認識しており、引き続き、国に要望していきたい。また特別支援学級への教職員の加配措置については、市町村教育委員会と連携し、学校の現状に応じて配置できるよう努めていく。

全群教コメント

障がいの程度に応じて支援の必要性は異なるのですから、8人という数字にこだわらずクラスを増やすべきです。このこと自体は教委も認めていますが、「人がいないので仕方ない」と言います。

そう言われると「仕方ないか…」と思いってしまいがちですが、支援を必要としているのは子どもたちです。私たちは「子どもたちの最善の利益」を目指して教育活動に当たっているのですから、「人がいないから仕方ないんだよ」と子どもたちに負担を強いるのではなく、「子どもたちのために人をつけよ」と声をあげるべきです。

必要なときだけ、安く、都合よく働いてくれる人が見つからないのは当然です。教委は「仕方ない」と私たちを説得するのではなく、「子どもたちのために予算を増やせ!」と県や国を説得し、正規教員を増やすべきです。

特別支援学校における地公臨の解消に向けて

県教委回答

教員採用試験では、ここ数年、特別支援学校教員で50名程度を採用している。引き続き地公臨の解消に向け、配置については正規雇用の職員となるようにしていきたい。

全群教コメント

特別支援学校では定数内地公臨の割合が多いですが、そもそも定数内は全員正規でなければおかしいはずです。「臨時教員が4月から3月までフルタイムで正規と同じ仕事をする」という実態は、どう説明しても整合性が取れません。

それでも、「近年は意識的に採用を増やしている」ことは歓迎します。そこで、「どの程度解消できているのか、推移を示すこと」を要求しましたが、そこは開示しません。なぜ隠す必要があるのでしょう。

ICT教育における保護者負担について

県教委回答

通信環境の整備を含めたICT環境整備については、要求の趣旨を踏まえ、国に対して十分な財政支援措置を講じるよう今後も継続して要望していきたい。

全群教コメント

国が一気に進めた一人一台端末ですが、そろそろ買い替え時期です。何も要求しなければ十分な予算措置をせず、保護者負担になっていく可能性が高いと考えます。県は「学校設置者(市町村)が考えること」とし、責任ある回答を避けています。いつの間にか保護者負担や学校の責任が増えているかもしれません。

また最近はEDIX東京という、教育ビジネスの展示会が拡大しています。ICT自体は必要なものですし、すべてを否定するつもりはありませんが、意識的にアンテナを高く張らないと、いつの間にか教育がビジネスに飲み込まれ、金儲けの種にされてしまいます。

教職員の研修等について

県教委回答

教職員の研修等については、教職員自身の意欲や主体性を十分に尊重するとともに、指導案などが過重な負担にならないよう、管理職に周知徹底していく。

全群教コメント

研修には、マニュアルが必要なものと、マニュアルが無意味なものがあります。例えば、エピペンやAEDの使い方の研修にはマニュアルが必要です。そこには創造力や個人の工夫は必要ありません。何よりも、正しい手順で取り扱うことが求められます。

一方、授業づくりのマニュアルは無意味です。もちろん、誰かの授業を参考にするのは大いに結構ですが、指導要領を「無謬の聖典」として行うマニュアル研修は、授業から創造力や個人の工夫を奪います

※昔、あえて指導書通りにやってみたら「つまらない」と言われました。そこで「指導書通りにやったんですよ」と言ったら、「それならいい」と言われたことがあります。そんなものです。

私たちは、教師の授業を型にはめていくような研修のあり方自体に反対しています。しかし、どうしてもやらなければならないなら、せめて不毛な負担は極力減らすよう要求しています。教委も「指導案はA4で2枚以内を基本」と言っていますので、なるべく指導案に時間を取られないようにしていきましょう。

※「子どもたちのためにこういう授業がしたい」と考え、自分でイメージするための指導案が必要というのなら意義がありますが、「研修で書かねばならないため」「指導要領に合わせるため」「エライ人に怒られないため」に書く形式だけ立派な指導案は無意味です。

指導主事訪問について

県教委回答

未配置が生じているなど困難な状況にある場合は、市町村教委に相談していただきたい。市町村教委には、実施時期や実施内容の見直しを検討していただくなど、学校に過度の負担が生じないよう依頼していきたい。

全群教コメント

私たちは指導主事訪問自体が不要だと考えていますが、「教委がそれをしなければならない」ということについて、納得はしませんが、理解はしています。しかし、指導主事訪問が学校にとって負担であることは紛れもない事実です。未配置が生じ、ただでさえ苦しい状態にある学校でも指導主事訪問をしている状況には違和感しかありません。

私たちはせめて「未配置が生じている学校での指導主事訪問はやめること」を要求し続けています。今回、ようやく若干の前進があったので、各学校からも声をあげてほしいと思います。

初任者研修について

県教委回答

初任者研修の実施においては、指導案の簡略化や指導案なしでの研究授業の実施も可能など、具体的な対応について周知し、受講者に過度な負担とならないようにしていきたい。

全群教コメント

特別支援学校の中には、初任者に年間30本の指導案を書かせている学校もあります。事前指導、事後指導を合わせれば、年間で90時間(3時間×30)の労働強化です。膨大な持ち帰り仕事も発生し、初任者を追い詰めています。指導案を書くために、目の前の子どもたちと向き合う時間がなくなるのでは本末転倒です。

「指導案なしでの研究授業」とは、普段の授業を見てもらい、アドバイスをもらえばよいということです。初任者にとっても、指導教官にとっても、労働条件の改善となり、子どもたちと向き合う時間を作ることができるようになるはずです。

「全国学力・学習状況調査」について

県教委回答

参加及び協力について各市町村教委の主体性を尊重しつつ、学校現場や教職員への負担が明らかになった場合には、対応を検討していきたい。

全群教コメント

全国学テは、「競争させて学力を上げるべき」という政治主導で始まったもので、当初は文科省も反対していたものです。さすがに「点数競争をさせるため」というわけにもいかないので、「調査のために行う」となりました。

しかし、『調査』が目的であるのなら、統計調査の手法を用い、専門家が時間をかけて調査のための問題を作り、悉皆ではなく抽出で行わなければなりません。(詳しくは『全国学力テストはなぜ失敗したのか』を読んでみてください)

また、「点数競争は好ましくない」という文科省の意見も取り入れて、「どうせやらねばならないなら、指導に役立つためのテストにしよう」となり、「調査のため」というより「指導のため」という要素が強くなりました。

結果的に、調査に役立たない、全国規模で行う普通のテストになってしまいました。調査結果は毎年、「基本問題はまずまずだが、応用問題に課題がある」というものです。そんなこと、調査しなくも分かっています。

調査のためのテストと指導のためのテストは別物なのに、混ぜてしまったことで、どちらの役にも立たないものになってしまいました。

役に立たないばかりでなく、過度な点数競争、類似問題の練習や不正、マニュアル徹底のための労働強化など、弊害と無駄な労働ばかりが増えています。学校現場や教職員への負担はとっくに明らかで、即刻やめるべきです。

全国学テは、形の上では「それぞれの市町村教委が希望して受けている」ことになっています。しかし実態は、国が決め、都道府県が市町村にやらせているものです。「受けない」という選択肢はありません。

教委は「国が決めたことは正しい」という前提で話を進めるので、私たちの「全国学テは不要」という主張とは、常に平行線です。しかし本来、教育委員会は政府の下部機関ではない(戦時中、学校が政府の下部機関として、子どもたちを戦場に送ってきた反省から、法的には独立性を認められている)のだから、「国が決めたことは常に正しい」という立場をとる必要はありません。

各市町村教委の判断で、「全国学テは子どもたちのためにならない上、教職員の労働強化につながるものであるため、本市(町村)は参加しない」と決めればやめられます。

私たちは県教委に、「各市町村教委に、全国学テに参加しないという選択肢を示すこと」を要求しましたが、県教委の回答は「各市町村教委の主体性を尊重」と、弱い表現になりました。

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