【報告】不当労働行為への対応
全群教に対する不当労働行為が発生したため対処しました。
目次
不当労働行為の概要①
2024年12月23日 15:40頃、組合員Aが組合チラシ配布のために学校訪問。対応は管理職B。
B「この学校では、チラシの配布、カンパをさせていない。私の判断。両方(全群馬教職員組合と群馬県教職員組合)ともさせていないのだからいいでしょう?」
A「組合活動を禁止しているんですか?」
B「勤務時間内にはさせていない。組合活動はさせているがチラシは配らせていない。あなたもしつこいな。アポをとってくるのが普通でしょ? どうせ帰ってから組合に言うんでしょ? それが面倒なんだよ、本当に失礼だな」
A「面倒なのは、こちらが正しいからですか?」
B「人事のことで今年大変だった。そういうの知らないでしょ?」
A「人事のこととチラシ配布のことは関係ないですよね?」
B「じゃあ受け取るよ。そっちが脅すようなこと言ってくるから」
A「脅してないですよ。言われたことを報告するのは当たり前ですよね?」
B「配るから渡してください」
A「じゃあ、よろしくお願いします」
・管理職の判断で正当な組合活動を制限するのは重大な違法行為である。
・この管理職の対応は組合を敵視していることが大きな問題。組合を嫌うのは自由だが、態度で表すのは問題。労使は対等かつ誠実に話し合うべきである。
・「人事のことで大変だったからチラシを配らせない」というのは理由にならない。少なくとも、その件に当組合は関与していないので、他の教組と交渉すべき内容である。
・適法に権利を行使している組合に対し、「脅すようなことを言ってくる」と発言すること自体がハラスメントである。適法な行為に対して「脅されている」と感じるのであれば、自らが違法行為をしているからに他ならない。
不当労働行為の概要②
2024年12月24日 8:40頃、組合員Cが組合チラシ配布のために学校訪問。対応は管理職D。
D「預かって、欲しい人が持っていけるようにする」
C「せっかく来たのだから、みなさんに配らせていただきたい」
D「私は配ってほしくはない」
C「自分で配ることに意義があるので、配らせてもらいたい」
D「だから、私は配ってほしくはない。それは預かります」
C「どうして『配ってほしくない』なのか、その理由を教えてください」
D「組合活動は勤務時間中に行ってはならない。県教組の組合員にも、カンパや集まって相談する時などは時間外に行うよう指導している」
C「私は年休を取って来校しています」
D「あなたは年休かもしれないけれど、こちらはみんな勤務時間だからチラシを受け取ってもらうことはできない」
C「机の上に置かせてもらえればいいのですが」
D「あなたはよくても、あなたがチラシを配れば仕事を止める人が出てくる。組合活動はルールを守った上で行わなければならない。理解してくれた?」
C「はぁ、半分ですね…」
・チラシを配布するという正当な組合活動に対して、校長が「配ってほしくない」と発言し、萎縮させようとすること自体が重大な違法行為である。
・勤務時間には「手待ち時間」が含まれ、特別な職務命令がない間の行動は教職員個人の裁量となるのが当然である。手待ち時間まで校長が管理するのは重大な人権侵害と言える。当然、手待ち時間に組合のチラシを読むも読まないも個人の裁量である。そして組合チラシには学校の労働環境等に関する内容が書かれており、業務と直接的に関係するものでもある。
・普段から校長が一人一人の手待ち時間まで管理しているはずはないので、今回の校長の言動は「組合活動を制限したい」という意図をもって行っているものと考えざるを得ない。
逐条地方公務員法 第56条「不利益取扱の禁止」より抜粋
「職員が職員団体活動を行うことは、労働基本権(憲法28)によって保障された権利であり、当局がこれを妨害するようなことがあってはならないことは当然である」
「使用者が勤労者の団結に不当な干渉を行ってはならないことは、近代国家における基本的原則であり、まして地方公共団体の当局は法令を実施し、公益を実現する立場にある者であるから、なおさらそのようなことがあってはならないものである。(中略)しかしながら、公共部門を含め、労使関係全体において、使用者が時として勤労者が団結して行動することを嫌い、これを妨害しようとする傾向も絶無とはいえない。法律があえて明文の規定を設けたのは、こうしたことの絶無を期するようさらに当局を戒めたものといってよいであろう。」
「当局と職員団体との関係は、このような消極的禁止の範囲にとどまるべきものでなく、当局は進んで職員団体の持つ意義を積極的に評価しなければならないものである。従来、一方的に勤務条件を処理してきた当局が、職員団体が組織されたため、勤務条件について逐一交渉するようになることは、一見して煩瑣なことのようにも思われるだろう。しかし、職員は団体活動を通じて、あるいは団体の力を背景として従来よりも自由かつ率直にその意見を表明するようになり、当局はその意見を知ることによって相互の意思疎通が一層円滑に行われることとなるのであって、このことが職場の民主化と公務能率の増進に少なからず寄与することは疑いないところである。成熟した労使関係の下においては、正常な労働運動とともに使用者の労働団体に対する積極的な姿勢が確立されており、地方公共団体においてもこうした関係が樹立されるよう労使双方が努力すべきものといえよう。」
地方公務員法には、不当労働行為等への罰則規定がありません。それは「地方公共団体が違法行為などするはずがない」という前提で法令が作られているからです。しかし、だからこそ当局は「積極的に、組合活動の意義を尊重しなければいけませんよ。組合が率直に意見を言ってくれた方が、結果的によりよい行政となりますよ」ということが書かれています。
県教委への要求(1月20日)
当初は、当該校の校長と直接交渉し、謝罪を求めることを考えました。しかし事態の重大さに鑑み、県教委に要求書を提出し、全県的に不当労働行為がなくなるよう周知することを求め交渉することにしました。
要求項目
1.不当労働行為を行った学校の管理職を指導し、全群教及び当該組合員に対して謝罪させること。
2.今後、不当労働行為が起こらないよう、県教委として再発防止策を講じること。
3.労使は対等であり、教職員組合の活動は最大限尊重すべきであることを県内すべての学校の管理職に周知すること。
4.初任研、中堅研等の悉皆研修の場において、組合役員が教職員組合について説明する場を設定すること。
県教委の回答
1に対する回答
「組合活動について、正しい理解が浸透するよう、当該市教委・当該管理職への指導を行う。併せて、誤解を生じさせる言動は慎み、不適切な言動についての注意を行う。」
2・3・4に対する回答
「管理職を対象とした研修の中で、県教委より、教職員組合について改めて説明することとする。併せて市町村教委にも、校長会の研修課題等で、教職員組合について取り上げるよう働きかけていく」
4に対する回答がなかったので、改めて回答を求めました。
再回答
研修計画の立案を行う総合教育センターとも協議し、管理職を始めとした各種研修において、組合活動に関する具体的事例(今回の件)等も取り上げながら、教職員組合の意義や役割、教職員の権利について、研修を引き続き実施していく。研修は県教委の責任でやらせていただきたい。併せて市町村教委にも、校長会等の研修課題等で、教職員組合活動について取り上げるよう、働きかけていく。
十分満足とは言えませんが、当局としては誠意をもって一定程度、譲歩の姿勢を示してくれたので受け入れました。後日、今後の組合と当局の関係について懇談をもつことを約束しました。
当該校長からの謝罪(2月13日)
当該校の校長に交渉を申し入れ、謝罪と再発防止を要求しました。謝罪内容については、若干気になる部分はあったものの受け入れました。しかしそもそも謝罪とは、不当な扱いを受けた側が「謝罪せよ」と申し入れるものではなく、悪いことをした方が「謝罪したい」と申し入れてくるものだと思うのですが…
県教委との懇談(3月5日)
交渉ではないので3つのお願いをし、それらについて意見交換をしました。
- 管理職に対して、組合活動について正しい理解を促し、個人の主観ではなく、法に則った対応をするよう指導徹底してください。
- 長時間過密労働の解消について、組合の意見を聞いてください。
- 保護者対応について、教職員を守るための方策に関して組合の意見を聞いてください。
1.全群教が学校に貢献している具体例
・パワハラ相談(管理職や同僚からのハラスメント)
・パワハラの解決(管理職が解決する気がない事例等)
・パワハラの起こりにくい職場づくり(日常的な情報発信等による意識醸成)
・「辞めた方がいいのか」と悩んでいる人に寄り添って相談を聞き、励ます。
・法律相談(ハラスメント、勤務時間、職務命令に当たるか、保護者対応など)
・定時退勤しやすい職場づくり(弱い立場に置かれている人に感謝される)
・教育実践や人権に関する知識の共有(子どもの権利条約の周知等)
・校長が(忖度して)言えない学校の問題を教育委員会に伝える。
・校長が(保身のために)隠していることを教育委員会に伝える。等々
校長からすれば、法令に則って耳に痛いことを言ってくる全群教の組合員は目の上のタンコブかもしれません。中には「法律を盾にとって脅される」などと言う校長もいます。「法律を盾にとって」と思う時点で、自分が違法行為をしていると気づくべきです。校長が法令を守らず、威圧と不機嫌さで職員を支配する学校は、安心して働ける職場ではありません。法令に則って(これは結構重要です。組合員も気分だけで校長に文句を言うのは問題です)、おかしいことに「おかしい」と言う組合員がいた方が学校の雰囲気は良くなり、よりよい教育活動につながります。
2.上意下達ではなく、現場の声を聞くべき
今年度、拙速に導入された高校入試のWEB出願は現場の多忙を加速させました。この問題に限らず、現場の意見を聞かず、上意下達で増やされる業務は身体的にも精神的にも教職員を疲弊させること。また、国が導入を急ぐ「新たな職階制度」がもたらす混乱を危惧していることを伝えました。東京都では2003年に主幹教諭、2009年に主任教諭の制度を導入したことでパワハラが増え、休職や退職が増えています。群馬県は主幹教諭制度を導入しなかったことで、職員室内での不要な分断が生じておらず、他の自治体に比べ、教職員同士の円滑な関係が築けています。「国が言っていることだから」と安易に導入するのではなく、組合を通して現場の意見を丁寧に聞いていただきたいと伝えました。
3.保護者対応について
私たちは「モンスターペアレント」などとレッテルを貼り、学校と保護者を対立的に捉えることには反対です。しかし、教職員を守らず、理不尽な要求を何でも受け入れる事なかれ主義にも反対です。全群教では、弁護士を講師に招き、法令に則った保護者対応について学んでいます。しかし、私たち一般教職員が知っているだけでなく、学校として組織的な対応をしなければ問題を解決することはできません。場当たり的で曖昧な対応になってしまわないよう、法律を知り、事前に対応策を考えておく必要性について伝えました。
労働組合の大切さ
戦後すぐの頃、文部省が作った『民主主義』という教科書には「民主主義の根本精神は、人間の尊重。労働組合は、そのような要求からみて最も重要な意味を持った組織」と書かれています。まさにその通りです。つまり労働組合を敵視し、弱体化させることは「人間を尊重しない社会」を作ることになります。
戦後の逆コース以降、日本は「人間を尊重しない社会」を作ってきました。過労死が絶えない働き方や、社会を良くしようと行動する人を冷笑する人をもてはやしたりする風潮が象徴的です。労働組合を弾圧してきた成果と言えます。
アメリカでは世の中の理不尽に怒っている人々が労働組合に結集し、「カネだけ、今だけ、自分だけ」の社会を変えようと行動しています。カネがモノを言う世の中で、私たちが社会に影響を与えるために使える最大の公器が労働組合です。ドナルド・トランプやイーロン・マスクが労働組合を敵視し、毛嫌いしていることからも、「労働組合がいかに大切か」がよく分かります。
今回の不当労働行為をきっかけとして、多くの人が組合の大切さに気づいてくれるといいのですが…
県教委交渉の前に人事委員会にも相談しましたが、「今回の件は問題であるとは思うが、人事委員会の権限でできることはない」とのことでした。やはり労働基本権の制限は、非常に大きな人権問題です。「人事委員会とは何か」を理解するためにはマッカーサーまで遡ります。説明は割愛しますが、公務員が「労働基本権」という憲法で保障された基本的人権を不当に制限されていることに根本的な問題があります。
2025年度 群馬県高校入試
2025年度 群馬県高校入試に労働組合に関する問題が出題されました。「労働組合が大切」ということは、入試問題になるほど疑いようのない事実なのです。
